【企業事例あり】メタバースが活用されている4つの分野を紹介

近年、通信技術の発達にともない、さまざまな分野で注目されているのがメタバース(仮想空間)です。幅広い層にとって身近なメタバースの例として、ゲームコンテンツがあげられます。VRマルチプレイゲームのようなアクション性の高いコンテンツに限らず、昔からある島での生活を楽しむコミュニティゲームなども、メタバースを活用しています。 作成したアバターでシームレスなフィールドを駆け抜けられる自由度の高さは、まるで自分が物語の登場人物として異世界に実在するかのようなリアリティを味わえます。 ゲーム業界のほかにも、メタバースを活用した事業展開を行っている業種はさまざまです。ここでは医療、教育、小売、建築・設計の4つの分野における事例を紹介します。

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【医療分野】メタバースの活用事例

医療分野の技術的進歩は目覚ましく、メタバースの導入も医療現場に多くの変化をもたらします。メタバースを活用した主な事例は、次の3つです。

健康診断

メタバースで自身の代わりとなるのが、アバター(分身)です。医療分野では、アバターに本人の身体的特徴や健康状態の委細を反映させることで健康診断に役立てようとする考えがあります。

現時点では想定の範囲に留まっていますが、インターネットを介した遠隔診療が僻地医療を中心に取り入れられつつあることから、実現する可能性がないとは言い切れません。今後はアバターを介して、既往症の最適な治療法を検討したり、将来の病気の発症リスクを予測したりするようになる可能性は大いにあります。

距離や時間に制限されず健康診断が受けられるようになれば、医師不足の地域に住む患者はもちろん、日中、病院に行けない方も気軽に受診できるようになります。

ヘルスケア

診療や医療関係者の教育においても、メタバースは活用されています。ここではA社の例とB社の例に分けて紹介します。

A社はインターネットを介した遠隔診療やVR教育コンテンツなど、医療現場に欠かせないさまざまなデジタルサービスを提供しています。たとえば、複数の医師がヘッドセットを装着すれば、ひとつの3Dホログラムを共有できる技術などです。

3Dホログラムを見ながら手技の共有、カンファレンスを行えます。デバイス同士をインターネットで接続すれば、遠隔地にいる専門医とのやりとりも可能です。場所を問わず、高度な医療を施すことも不可能ではありません。

B社の例では、VRカリキュラムを活用した効率的な教育プログラムがあげられます。感染症教育VRをはじめ時勢に合ったコンテンツが随時作成されているのが特徴です。VR動画では施術者の視点で手技を学べるため、高い学習効果が期待できます。

バーチャルホスピタル

仮想空間では、実際にサービスを提供することも可能です。大手医療法人では、デジタルソリューションを提供する企業との共同で、2022年内の実現を目途にバーチャルホスピタルの構築が進められています。

バーチャルホスピタルの活用シーンとして想定されているのは、来院前の施設見学、入院患者と家族の交流です。来院前に仮想上の院内を体験できることで、事前に病棟や診察室の雰囲気を把握することが可能です。外出が困難な入院患者はバーチャルホスピタルのコミュニティ広場で家族と触れ合えるでしょう。

患者の満足度向上につなげる取り組みだけでなく、メタバースをどのように症状の改善に役立てられるかなどについても研究されていく予定です。治療の疑似体験やメンタルヘルスケアの改善にも、メタバースが活用されます。

【教育分野】メタバースの活用事例

小学校でタブレット導入が進むなど、教育分野においてもデジタルツールの利用が活発化しつつあります。ここでは、子ども向けから大人向けまで幅広い教育分野におけるメタバースの活用事例を紹介します。

子どもたちへの新たな教育手法

近年の子どもたちはスマホゲームをはじめ、気軽に楽しめるコンテンツに慣れ親しんでいます。VRを取り入れた授業はゲーム感覚で没入できることから、新たに注目を集めている教育手法です。

ここでは身近なケースとして、英会話教室と学校での活用事例を紹介します。

英会話教室では、オンライン英会話にメタバースを活用しています。英語のVRプラットフォームを使用し、VRライブでレッスンを行うのが主な手法です。メタバースでは世界中を旅しながらシチュエーションに合った英会話を学んでいけるため、ゲームのように楽しみながら学習できます。

IT企業が運営する学校では、「普通科プレミアム」でVR授業を取り入れています。2,300本を超えるVR授業は自宅で受講することができ、子どもたちが出席するのは現実の教室ではなく、メタバースに構築された仮想教室です。

授業中はVRゴーグルを装着することで、仮想空間に広がる勉強アイテムや教室の風景で視界が埋まり、スマホや漫画などに集中力を乱される心配もありません。教師はもちろん、周囲にはクラスメイトのアバターが存在するため、現実の学校と同じような教室環境で過ごせます。

新入社員をはじめとした社内研修

大手印刷会社では、コロナ禍により従来の方法での開催が困難となった新入社員向けの社内研修を、メタバースを用いて開催しました。新入社員同士の交流の場としても活用されており、自社アプリで良好なコンディション維持や管理につながる教育プログラムを提供しています。

メタバース上のコミュニケーションプラットフォームでは、トレーナーである先輩社員との交流も可能です。コロナ禍における入社で抱えがちな不安を相談でき、モチベーションを向上させる効果が期待できます。

健康活動や社内活動への参加でポイントが貯まるシステムも導入されており、バーチャルショッピングモールでインセンティブとの交換も楽しめます。

【小売分野】メタバースの活用事例

メタバースは小売分野でも多くの企業から注目を集めています。世界的人気ブランドなど、さまざまな企業がメタバースによる集客を取り入れ始めました。

ここではバーチャル店舗とNFTコレクションのふたつの活用パターンを紹介します。

バーチャル店舗

バーチャル店舗では、アメリカ発のブランドが実際の原宿店を模した建物を作成し、話題を呼びました。バーチャル店舗ではアイドルとのコラボ商品を展示し、社員がアバターを操作して接客します。

サプライズでアイドル本人が登場する、アバターで記念撮影を行うなどイベントも開催可能です。

ブランド単独で構築されるバーチャル店舗のほか、複数のブランドが集まってショッピングモールやイベント会場のようなメタバースを展開することもあります。

老舗百貨店が2021年に参加したのは、複数のショップが集まるメタバース上のイベントです。出展者も来場者もアバターを駆使して、さまざまなアイテムを売買します。アパレルグッズなど実物の商品が販売されることもあれば、3Dモデルが無料配布されることもあり、バーチャル店舗ならではの自由度の高さが好評を博しました。

アパレルブランドのNFTコレクション

NFT(Non Fungible Token)は、ブロックチェーン技術を利用したデジタル資産のことです。作者名や所有者名をはじめ、あらゆる証明情報が記録されることから、唯一無二で高い信頼性をもつ資産として注目されています。

スポーツ系のアパレルブランドでも、NFTコレクションが発行されています。ブロックチェーンゲーム内の仮想土地を購入したある企業は、メタバース内でしか体験できない限定コンテンツやプログラムを計画中です。

プロジェクトで発行されたNFTコレクションを入手すると、限定プロダクトやメタバースへのアクセス権、バーチャルでのブランド体験が提供されます。新たな体験の開発にも先行ユーザーとして招待など特典が多いメリットもあり、発売からわずか1日で完売しました。

【建築・設計分野】メタバースの活用事例

建築・設計分野では、メタバースを商談の場とすることもあれば、開発に活用することもあります。たとえばメタバースに研究所を構築し、VRシミュレーションを用いて設計・施工にかかる工数削減を図る研究を行っている企業があります。

従来のモックアップを作成する場合、原寸大では産業廃棄物の量の問題があり、縮小版では手戻りのリスクがあるなど、工数・コストの両面において効率的ではありませんでした。しかしメタバースでモックアップを作成する方法なら、廃棄物や手戻りのリスクを軽減しつつ、多角的な施工検討が実現可能です。

メタバース上の研究所構築にはVRやARの開発事業を手掛ける専門会社が参加しているため、既存データを活用するなど施工検討時のコスト削減にもつなげています。

まとめ

メタバースを活用するうえで重要なのが、目的に応じた場所を構築することです。どのような空間を用意できるか、その中で何をさせるのかを主軸に、既存または新しく作成した三次元データを使用します。

たとえばアパレルアイテムは既存のデータがないため、一から作成する必要があります。一方で建築やカーデザインは、三次元データがもともと存在しており、メタバースを取り入れやすい分野です。

近年は都市モデルを作成するスタートアップ企業への注目も集まっており、投資が盛んに行われています。しかし一部の業界では、ツールの開発において遅れを取っている状況でもあります。

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