「VR空間の脳波を分析」ユーザーの潜在的な欲求を抽出する脳波分析とは

近年ではマーケティングや製品開発においてVRを活用して脳波データを取得、分析する動きが目立っています。 2022年3月、米国のスナップチャットがNextMindを買収しました。NextMindは、脳波コントロールデバイスの開発・提供を行っているフランス発のスタートアップ企業です。加えて、Meta(元フェイスブック)も、VRを使用したフィットネスアプリで有名な脳波の研究会社を3~4年前に買収しています。 それではなぜVRを用いた脳波分析が注目を集めることになったのでしょうか。本記事では脳波分析をビジネスに活用する背景、VRで取得した脳波データの活用方法を紹介します。

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VRを活用することで実現できる3つのこと

脳波分析によって高品質な製品やサービスの開発・提供を行うことは、顧客満足度の向上にもつながります。

ここではVRを活用することで実現できる、顧客満足度や顧客体験価値の向上につながる3つのポイントを紹介します。

よりリアルな購買体験を提供できる

動画はカメラが向けられている一定方向のみを映すため死角ができてしまいますが、VR映像は360度見渡せ、真上や足元も見ることができます。

通常であれば実際に手に取って確認しなければ価値が分かりづらい商品も、VRなら仮想体験による魅力付けが可能です。ユーザーが家にいながらリアルに近い状態で、商品を体験しつつ検討できます。

「実際に体験できない」ことが、Webサービス上のデメリットとして度々挙げられます。VRを活用することで、Web上でもよりリアルに近い体験が可能になり、機会損失の減少が期待できます。

より質の高い製品・サービスを提供できる

質の高い製品やサービスの提供において重大な役割を担うのが、従業員の研修です。動画で機器の操作手順などのマニュアルを用意していても、従業員の手元が鮮明でなければ効果的な教材とはいえません。

VRを活用すると第三者の視点ではなく、従業員の視点で業務内容を見ることができます。機械操作の手順や材料の投入タイミングなどを自分が作業しているかのような視点でシミュレーションできるため、知識が定着しやすくなります。

図や文章、動画を用いたマニュアルとは異なり、立体的な学習が可能です。店頭での接客など、当事者意識を持ちにくい業務の研修にも役立ちます。

また、災害時などイレギュラーな事態の対応もVRなら容易に体験可能です。災害時の対応は、現実では実施しづらい研修ですが、VRならリアルな風景の中で学べます。

よりスピーディーに商品を提供できる

工業製品のデザイン、車や建物の設計などは、企画段階で模型を作成するのが一般的です。立体化することではじめて気付く不便性もあるため軽視できない作業ですが、模型製作に多くの時間がかかる点はデメリットともいえます。

VRを活用すると、模型作成にかかる時間を短縮できる、共有や意見の反映をリアルタイムでできるなど、一部のプロセスを簡略化できるでしょう。模型制作にかかる材料費などの費用の削減にもつながります。

模型制作からクライアントへの共有、最終決定までのステップを円滑に進められます。

VRを用いた脳波分析の事例

ハウスメーカーを例に、すでに実装されている脳波分析のサービスへの活用事例を紹介します。

内装デザインは壁紙や天井の高さひとつ変わるだけで、印象が大きく異なるものです。VRに脳波分析を掛け合わせて「白い天井」と「茶色い天井」でABテストを行ったところ、白い天井のほうがリラックス状態にあることが分かりました。

VRで完成予想のCGを顧客に見てもらうだけでは、「なんとなく気に入らない」「どこを直したいのか分からない」と違和感を言語化することが困難な場合があります。そこへ脳波分析を掛け合わせることで、はじめて視線の先にあるものと脳波の変化が結びつき、定量化した確かなデータとして可視化できます。

このように脳波分析を取り入れたデータ収集は、すでに多くの業界や場面で活用されている手法です。

VRを導入するまでの4ステップ

VRは「実物の完成前に体験できる」「リアルな体感が得られる」など顧客サービスとして浸透する一方で、製品やサービス開発の場でも欠かせない技術です。しかし自社にあったサービスの選び方を理解していなければ、十分に機能を活用できないおそれがあります。

そこでVR導入を検討している方へ、導入までの4ステップを紹介します。

ステップ1.導入目的を明確化する

VRの開発会社やベンダーに問い合わせする前に、自社でやりたいことを整理しましょう。たとえば、以下のポイントを明確化します。

・本当に必要性を感じているか

・導入することで自社の損害は防げるか

・自社でやりたいことにマッチしているか

流行しているから、取引先が導入しているからと安易に導入を進めると、自社が求める効果は得られません。具体的かつ整合性の取れた目的を定めることが大切です。

また、現状の課題を洗い出すことから始めると、自社により必要なものが見えてきます。

ステップ2.情報収集する

VR導入の目的や求める効果を整理できたら、自社にマッチしたサービスを探します。VRの開発会社やベンダーに相談したり、資料請求したりして、可能な限り多くの情報を集めましょう。

コスト面や機能の充実度に注目しがちですが、必ずしも正解とはいえません。安すぎると自社が求める機能が含まれていない場合や機能が豊富でも一部の機能は使う機会がほとんどない場合があります。

ステップ3.比較検討する

資料請求などで収集した情報を慎重に比較します。VRとひとくちにいっても、搭載されている機能やデバイスの種類は多岐にわたります。目的に合わせてサービスを絞り込んでいきましょう。

重視すべきポイントは、機能性です。必要な機能が搭載されていることはもちろん、分析できる内容や操作方法の簡易性なども重視して選ぶと、導入後に焦らずに済みます。

ステップ4.見積もりを依頼する

見積もりの依頼は、本格的な商談に入っている段階です。サービス提供者にとっても見込み顧客として、より詳しい情報提供や交渉に進みたい段階といえます。

具体的な商談を進めるためには、Webページやメールでの簡素的なやり取りでは不十分でしょう。Web会議や対面での商談など、担当者と顔を合わせて話を煮詰めていく最終段階です。

見積もり内容を隅々まで確認して、信頼できる企業であることを確認します。場合によっては契約時に知らされていなかった費用が別途発生するなどトラブルのリスクもあるため、見積もりの各項目を詳しく突き詰めておくことが大切です。

まとめ

VRは、まるでその場に存在しているかのような体験ができるサービスとして浸透しています。娯楽目的はもちろん、企業の研修やトレーニング、製品やサービスの開発など、多くの場面で欠かせない技術となりました。

一方で、単にリアルに近い体験を提供するだけでは、言語化できない違和感や不快感などのユーザーニーズに気付くことは容易ではありません。そこで脳波分析を加えることで、視線の動きと連動したユーザー体験の定量化を行い、潜在ニーズの掘り出しが求められます。

今後はより多くの分野で脳波分析によって得たユーザーニーズを基に、製品やサービスの開発が進められることを考えると、早い段階でVRを導入しておくのもよいでしょう。VRを導入する際は、導入目的に合った機能を備えているかなどを入念に比較することが重要です。