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メンタルマップ研究の課題と価値

2016-01-28 (Thu) / カテゴリー:MentalMap,心的トポロジ

今回は、当社が考えるている、メンタルマップ研究の課題と価値について、
ウェアラブルコンピュータ/アイトラッキングによる研究内容も交えて、説明したいと思います。


当社では全般的に視環境を扱うことを前提としています。
その他の感覚器の議論も無視できませんが、そもそも五感を明確に区分すること自体を疑いながら、
現在は、学術的な蓄積のある視環境に絞りこみ、研究開発を進めています。


課題1:知覚要素の出力

まず、ユーザーが何を知覚しているか確認できる必要があります。


          <スケッチマップ>

その際によく用いられるのが前回にも挙げた、
上記のようなスケッチマップを用いる実験研究です。
ユーザーのメンタルマップ(認知地図)の解明等を意図して、
探索行動の被験者実験を行う際等によく用いられるもので、
探索径路上で、知覚した建物や道路などを描画するものです。

しなしながら、探索実験後に被験者が描かざるを得ないものであるため、
探索行動時にリアルタイムに生成されているである筈の、
脳内のメンタルマップとは本質的に異なってしまいます。

最近では、GPSやWiFiアクセスポイントを使った屋内外の現在地の定位技術等がありますが、
物理的普遍的な地図情報を扱うため、ユーザーの知覚要素の議論とは異なると考えます。


課題2:知覚要素の検出

次に、ユーザーが現前する風景を知覚できているかについて、
検出が難しいことが挙げられます。

アイトラッキングの実験研究を行っていると、要素を決めれば定量的な分析も可能になってきますが、
視線は対象に向かっていても、内容を把握していない視認があることが確認されます。
そのため、実際の視認行為と実際に知覚しているかどうか自体の判別が必要になります。


     <アイトラッキングの実験の様子>


                     <視認の型の分類>

この点について、当社では現状、アイトラッキングによる視認行為を、基礎実験の数値に基づきつつ、
構造主義的な視認と要素還元主義的な視認の側面を意識して、上記のように分類しています。


また、アイトラッキング等の要素をそもそも介さない、
脳内のイメージを直接描き出すブレーンマシンインターフェース等の研究が進めば、
メンタルマップがリアルタイムに描画される時代も来るかと思いますが、
それでも以下の課題3は残るのではないかと思います。


課題3:都市の創発性

難しさの根本的なものが、この問題だと考えています。

都市を建築物等が集合した普遍的なものと解釈すれば、
メンタルマップも普遍的な地図に対しての議論のみで、
その精度の議論、方向音痴等の定義も可能ですが、

創発的な概念である都市は、
フレーム問題や環世界の問題と同様に、
ユーザー各々によって異なるイメージを持ち得ます。

都市計画家のケヴィン・リンチは、主著「都市のイメージ」の中で、
都市のユーザー共通の普遍的なパブリック・イメージの構築可能性を挙げ、
分かり易い都市やイメージアビリティについて提起していますが、
ドアノブのような微細なオブジェクトが、
塔のような高い建物に比するランドマークに成り得ることも挙げており、
ユーザー個別のイメージの幅の大きさを示唆しています。


<ケヴィン・リンチ 都市のイメージ>



価値:メンタルマップの生成・身体の拡張

メンタルマップを研究する中では、上記のような課題が見えてきますが、
当社では、それらを豊かな価値に変えられないかと考えています。

ケヴィン・リンチも、「時間の中の都市」の中では、
都市のユーザーの体験を、より個別性の高い、時間の側面から捉え、
時間知覚の在り方を変えることが出来れば豊かなものに成り得ることを挙げ、
コンピュータ等の記録装置と知覚方式の開拓の重要性について言及しています。


当社では、都市に対するユーザーの入力精度を上げ、アイトラッキングを用いて、
リアルタイムに現前する風景に対してのフィードバックを意図した開発を進めています。

その結果、メンタルマップは、既にあって推定されるのではなく、随時生成されるものとなり、
身体が染み入っていくような豊かな都市が拡張的に構築できるのではないかと考えています。



次回は、
当社がメンタルマップと関連付けて考えているメンタルモデル(伴う分かり易さや複雑さ)や、
ポイントとして捉えて研究・実験・独自理論構築を進めている
・位相空間
・心的位相空間(心的トポロジー)
について、説明したいと思います。